統合失調症と診断された後、私は何度も、
「いったいいつから始まっていたんだろう」
と考えました。
入院する数日前まで、私は本人が統合失調症になるなんて、まったく考えていませんでした。
でも今、入院前の数日間を一つずつ振り返ると、確かに変化はありました。
最初は、本当に小さな違和感でした。
「なんとなく、いつもと違う」
それだけです。
その翌日には独り言が増え、さらに翌日には一日中しゃべり続け、過去の話が現実と合わなくなっていきました。
そして数日後、精神科へ入院しました。
今なら、
「あれも初期の変化だったのかもしれない」
と思うことがあります。
でも、ここで最初にはっきり書いておきたいことがあります。
後から見れば前兆に見えることと、その時点で統合失調症だと分かることは、まったく別です。
統合失調症の「前兆」「初期症状」とは?
統合失調症では、幻聴や妄想のような分かりやすい症状が出る前に、それほど特徴的ではない変化がみられることがあります。
厚生労働省は、発症の初期には、気分の落ち込み、集中力や意欲の低下、眠れない、不安や緊張が強くなるなどの変化が目立つことがあると説明しています。
前駆症状は「これがあれば統合失調症」というものではない
ここが、家族として一番難しいところだと思います。
眠れない。
疲れている。
集中できない。
人に会いたくない。
不安になる。
こうしたことは、
統合失調症でなくても起こります。
厚生労働省も、こうした前触れのサインは健康な人にもみられるため、それだけで精神疾患のサインとは限らないとしています。
つまり、一つの症状だけを見て「統合失調症の前兆だ」と判断することはできません。
幻聴や妄想が出れば必ず統合失調症、でもない
反対に、幻聴や妄想があれば、必ず統合失調症というわけでもありません。
厚生労働省は、幻覚や妄想は統合失調症以外の状態でも現れることがあるため、専門家に相談して原因を確認することが重要だと案内しています。
だからこの記事も、
「この症状があったら統合失調症です」
というチェックリストではありません。
わが家では実際に何が起きていたのかを、診断後に振り返った記録
です。
入院5日前|最初は「なんとなく違う」だった
私が最初に違和感を持ったのは、入院の5日前でした。
この時点では、精神科の病気なんて考えていません。
本人は、お腹が張るような体調不良を訴えていました。
睡眠も十分ではなく、何となくだるそうでした。
体調不良だと思っていた
最初は、単純に、
「体調が悪いのかな」
と思いました。
寝不足なら、ぼんやりすることもあります。
食欲や元気が落ちることもあります。
それだけなら、私も特に心配しなかったと思います。
小さな「いつもと違う行動」があった
でも、普段ならそれほど気にしないようなことに、妙に関心を向ける場面がありました。
その時、私は初めて、
「なんとなく、いつもと違う」
と感じました。
ただ、それだけです。
その日の時点で、
「統合失調症かもしれない」
なんて思うはずもありませんでした。
→ 入院5日前|最初に感じた小さな違和感。お腹の張りと、いつもと違う行動
入院4日前|独り言が急に増えた
翌日、変化はもう少しはっきりしました。
オンライン講座を受けている本人の、
独り言が急に増えました。
普段の本人とは、明らかに違いました。
家族みんなが「いつもと違う」と感じ始めた
私はイヤホンをして作業していました。
それでも気になるくらい、本人がぶつぶつと話していました。
家族も、
「今日ちょっと変じゃない?」
と感じるようになりました。
私一人の気のせいではなくなってきた日でした。
お風呂に入るまでにも、とても時間がかかった
普段なら普通にできることにも、時間がかかるようになりました。
お風呂に入るよう声をかけても、実際に動くまでにかなり時間がかかる。
そして、会話も少しずつかみ合わなくなっていきました。
→ 入院4日前|独り言が急に増え、会話がかみ合わない。「明らかにいつもと違う」と感じた日
入院3日前|「普通の体調不良ではない」と思った
この日は、さらに大きく変わりました。
本人は、ほぼ一日中、話し続けていました。
寝不足。
食事も十分に取れていない。
それなのに、ずっと話している。
私は、
「これは普通の体調不良ではない」
と思い始めました。
過去の話が現実と合わなくなった
そして、過去の人間関係について、事実とは合わない話が増えていきました。
最初は、
「そんなことがあったの?」
と思って聞いていました。
でも、だんだん、時間や事実関係が合わないことに気づきました。
本人は真剣でした。
こちらが、
「それは違うんじゃない?」
と言っても、簡単には変わりませんでした。
行動にも「いつもと違う」が増えた
外に出た時、本人が私の後ろに隠れるような行動もありました。
暑い時期なのに、身体を冷やそうとしながら、一方では毛布に包まれる。
その時は、一つ一つの行動の意味が分かりませんでした。
でも、いくつもの「いつもと違う」が同時に起きている ことは分かりました。
→ 入院3日前|一日中しゃべり続け、過去の話が現実と合わない。「これは普通の体調不良ではない」と思った日
入院2日前|眠れたから少し安心してしまった
入院2日前。
この日は、少し眠れたようでした。
すると、独り言も前日より減りました。
食欲もありました。
私は、少しほっとしました。
症状が軽く見える時間もあった
ここが、今振り返っても難しいところです。
状態は、一直線に悪くなったわけではありませんでした。
昨日より普通に見える。
今日は少し眠れた。
食事もできる。
そういう時間があると、
「良くなってきたのかな」
と思います。
でも、現実とは合わない話は残っていました。
この日、精神科へ行こうと決めた
私は親族の医師にも相談しました。
家族歴についても話しました。
そして、いろいろ考えた末に、
「精神科へ行こう」
と決めました。
世間体がどうとか、精神科に行った記録がどうとか、そんなことを気にしている場合ではない。
その頃には、そう思うようになっていました。
→ 入院2日前|「精神科へ行こう」と腹をくくった日。もう世間体を気にしている場合ではなかった
入院前日|普通に笑える時間もあった
入院前日は、さらに判断が難しい一日でした。
独り言は、前よりかなり減っていました。
私は気分転換になればと思い、本人が昔から好きだった場所へ一緒に出かけました。
昼間は楽しそうに見えた
動物を見て、本人は笑いました。
一緒に動画も見ました。
翌日受診する病院の問診票も、いつものような字で書きました。
犬の散歩にも行きました。
こういう姿だけを見れば、
「本当に精神科へ行く必要があるのかな」
と思ってしまいそうです。
その夜、一気に現実とのずれが大きくなった
ところが夜になると、状況は大きく変わりました。
本人は、家族に危害を加えたと思い込み、警察が来ると考え、玄関で待つようになりました。
そして明け方には、自分から110番しました。
昼間、普通に笑っていた本人と、同じ人です。
私はこの時、精神症状は「ずっと同じ強さで出ている」とは限らない のだと初めて実感しました。
→ 入院前日|普通に笑う時間もあった。それでも夜、現実とのずれが一気に大きくなった
わが家で振り返って気になった変化
入院後、この5日間を振り返ってみると、いくつかの変化が重なっていました。
睡眠が乱れた。
独り言が急に増えた。
会話がかみ合いにくくなった。
普段なら簡単にできる行動に時間がかかった。
一日中話し続けた。
現実とは違う内容を強く信じるようになった。
不安が強くなり、人を怖がるような行動が出た。
そして、本人自身の行動にも大きな変化が出ました。
厚生労働省も、統合失調症の初期には、不眠、不安や緊張、集中力・意欲の低下などがみられることがあり、その後、幻聴や妄想などの症状が現れる場合があると説明しています。
でも、わが家で一番重要だったのは、個々の症状の名前ではありませんでした。
「いつもの本人と明らかに違う状態が、いくつも重なった」
ことだったと思います。
「不眠」は今ならかなり気になるサイン
振り返って、特に気になるのは睡眠です。
本人は、入院前にあまり眠れていませんでした。
当時は、
「寝不足だから変なのかな」
とも思いました。
睡眠の変化だけで統合失調症とは言えない
もちろん、眠れないからといって、統合失調症というわけではありません。
不眠にはさまざまな原因があります。
ただ、厚生労働省は、統合失調症の初期に眠れない状態がみられることがあるとしています。
だから今の私は、急な不眠と、それ以外の大きな変化が重なった時には注意する と思います。
再発のサインとしても睡眠は大切らしい
NCNPは、統合失調症では、再発前にその人特有の注意サインが現れることがあり、不眠が続いた後にイライラや疑い深さが強まるケースがあると説明しています。
これは、これからの本人を見ていく上でも、家族として覚えておきたいことです。
初発時の変化を記録しておくことが、今後の再発サインを知る手がかりになるかもしれません。
「独り言が増えた」ことも、わが家では大きかった
もう一つ、かなり目立ったのが独り言でした。
普段から独り言を言う人なら、それだけで異変とは言えません。
でも本人の場合、量が明らかに違いました。
独り言=幻聴とは限らない
私は後になって、
「あの独り言は幻聴に返事をしていたのかな」
とも思いました。
でも、その時本人が何を体験していたのかは分かりません。
だから、独り言が増えた=幻聴だった とは書かないようにしています。
→ 統合失調症の幻聴とは?本人の体験を家族はどう理解すればいい?
「その人にとっての変化」を見る方が大事だった
独り言を言うこと自体より、昨日までほとんどなかった行動が、突然、大量に現れた。
私にとっては、そちらが重要でした。
これは、睡眠でも、食事でも、会話でも同じだと思います。
一般的なチェックリストだけでなく、
「この人は普段どうだったか」
を知っている家族だから気づける変化もあります。
「もっと早く気づけたのでは」とは思わないようにしている
入院後、私は何度も過去を振り返りました。
入院5日前。
4日前。
3日前。
「あの時点で精神科へ行っていれば」
と思おうとすれば、いくらでも思えます。
でも、5日前の本人を見て、統合失調症だと判断できたかと言われたら、私はできません。
最初のサインは、あまりにも普通だった
寝不足。
体調不良。
なんとなく元気がない。
少し行動がおかしい。
これだけなら、日常生活の中で普通にあります。
統合失調症の発症早期は症状がはっきりせず、診断そのものが難しいこともNCNPの研究紹介で指摘されています。
家族が、最初の小さな変化だけで、病名まで当てる必要はないと思います。
「変だ」が続いたら相談する。それで十分だったと思う
私が今、あの頃の自分に言うなら、
「統合失調症を見抜きなさい」
ではありません。
「いつもと違う状態が続いているなら、一人で答えを出そうとしないで相談して」
です。
厚生労働省も、気になるサインが続く場合には早めに専門家へ相談することを勧めています。
今後は「本人だけの注意サイン」を知っておきたい
今回の初発を経験して、私は、統合失調症の一般的な前兆を覚えること以上に、
本人特有の変化を知っておくこと
が大切なのではないかと思うようになりました。
わが家なら、まず睡眠と話し方を見ると思う
もし今後、本人の状態が悪くなることがあれば、私はまず、睡眠を気にすると思います。
そして、
独り言。
話す量。
会話のかみ合い方。
不安の強さ。
普段なら簡単にできることに、妙に時間がかかっていないか。
初発時に目立った変化を、もう一度見直すと思います。
記録しておくことにも意味がありそう
NCNPは、再発の注意サインについて、安定している時期に本人や周囲と共有し、普段から記録しておくことを対処法の一つとして紹介しています。
このブログを書いていること自体、私にとっては、初発時の記録になっています。
何が最初だったのか。
どういう順番で変わったのか。
家族は何を感じたのか。
これを残しておくことは、単なる過去の記録ではなく、この先のための記録にもなるのかもしれません。
今振り返って思うこと
私が最初に感じたのは、病名ではありませんでした。
「なんとなく、いつもと違う」
でした。
そこから、わずかな期間に、独り言が増え、会話がずれ、過去の話が現実と合わなくなり、本人の不安が強まり、最終的には精神科入院になりました。
後からなら、
「あれが前兆だった」
と言えます。
でも、その場では分かりませんでした。
だから、この記事を読んでいる人にも、一つ一つの行動を見て、
「うちの子も統合失調症かもしれない」
と怖くなってほしいわけではありません。
私が伝えたいのは、むしろ逆です。
一つのサインで病名を決めなくていい。
でも、
「いつものその人」と比べて明らかな変化がいくつも重なり、それが続いているなら、家族だけで答えを出さなくていい。
専門家に相談していい。
わが家の場合、最初の違和感から入院まで、本当に短い時間でした。
だから今は、病名を当てることより、
「いつもと違う」を見逃さず、必要な時に医療へつなぐこと
の方が大切だったと思っています。
そして、あの日からの記録を残しておくことが、これから本人と暮らしていく私たち家族にとっても、一つの手がかりになるのだと思っています。
入院前5日間の記録
- 入院5日前|最初に感じた小さな違和感。お腹の張りと、いつもと違う行動
- 入院4日前|独り言が急に増え、会話がかみ合わない。「明らかにいつもと違う」と感じた日
- 入院3日前|一日中しゃべり続け、過去の話が現実と合わない。「これは普通の体調不良ではない」と思った日
- 入院2日前|「精神科へ行こう」と腹をくくった日。もう世間体を気にしている場合ではなかった
- 入院前日|普通に笑う時間もあった。それでも夜、現実とのずれが一気に大きくなった


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