統合失調症の初発で、本人を精神科へ連れて行った日。
診察のあと、医師から、
「医療保護入院になります」
という説明を受けました。
私はその言葉を、ほとんど知りませんでした。
精神科の入院に、いくつも種類があることさえ、その時まで知りませんでした。
ただ、
「本人は今、家に帰れる状態ではない」
ということだけは分かりました。
そして、本人の意思だけでは入院を決められない状況になっている。
家族として、その現実を急に突きつけられたのが、
私にとっての「医療保護入院」でした。
医療保護入院になった人が、必ず保護室に入るわけではありません。
保護室への隔離は別の基準で判断されます。
▶ 医療保護入院と保護室の違いを、実体験からまとめました
医療保護入院とは何か
医療保護入院は、本人に精神障害があり、医療や保護のために入院が必要と判断される一方で、本人自身が入院に同意できる状態ではない場合などに行われる入院形態です。
精神保健福祉法に基づいて行われます。
本人の同意だけでは決められない入院
精神科には、本人が自分の意思で入院する任意入院があります。
一方、医療保護入院では、本人が入院の必要性を十分に理解できない、あるいは同意が得られない状態でも、一定の要件のもとで入院が行われます。
私が一番驚いたのは、
「本人が帰りたいと言っても、そのまま帰れるわけではない」
ということでした。
家族が勝手に入院させる制度ではない
ここは誤解されやすいと思います。
医療保護入院は、家族が、
「入院させたい」
と言えば自由にできるものではありません。
医師が本人の状態を診察し、入院による医療や保護が必要だと判断することが前提になります。
家族の同意が関わる場面はありますが、家族だけの判断で決まる入院ではありません。
わが家では、その日のうちに入院になった
わが家では、朝から精神科の受診先を探しました。
予約を取ろうとしても、すぐには診てもらえない。
でも、本人の状態は待てる感じではありませんでした。
緊急相談につながり、その日のうちに、受け入れ可能な精神科病院へ行くことになりました。
→ 入院1日目②|精神科を今日受診したい。でも予約は先だった。緊急相談から病院が決まるまで
病院に着いた時点で、本人はかなり不安定だった
病院へ向かう途中も、普通に話せる時間と、現実とは違う話をする時間が混ざっていました。
病院に到着してからは、問診票を書くことも難しくなりました。
診察の結果、医師から、統合失調症が疑われることと、入院が必要であることを説明されました。
「今日は帰れない」と分かった瞬間
私はそこで、初めて、
「本当に今日から入院なんだ」
と実感しました。
朝の時点では、まだどこかで、診察を受けて、薬をもらって、家に帰るのかもしれない。
そんな気持ちもありました。
でも、その段階ではありませんでした。
→ 入院1日目③|統合失調症と告げられ、医療保護入院へ。初めて見た保護室
なぜ本人の同意だけでは入院できなかったのか
初発時の本人は、自分の状態を、病気によるものだと理解できていないように見えました。
実際には起きていないことを、現実だと思っていました。
そして、自分が重大なことをしたと思い込み、警察まで呼びました。
「病気だから入院しよう」と納得できる状態ではなかった
家族から見れば、明らかにいつもと違う。
でも本人にとっては、自分が病気だという認識が十分ではなかったのだと思います。
だから、
「今は入院した方がいいよ」
と説明して、本人が納得して任意入院する、という形にはなりませんでした。
病識がないこともある
統合失調症では、自分が病気であることに気づきにくい状態がみられることがあります。
私も、初発を経験して初めて、
「本人が病気だと分からないこと自体も症状の一部になり得る」
ということを知りました。
当時の私は、
「どうして本人だけ分からないんだろう」
と思っていました。
でも、そういう状態だからこそ、本人の同意だけに任せられない場面があるのだと思います。
「家族が同意する」という重さ
医療保護入院では、家族側が同意に関わることがあります。
実際にその立場になると、かなり重いものがあります。
「私が入院させた」ような気持ちになった
制度上は、医師の判断による入院です。
でも家族としては、どうしても、
「自分が入院させた」
という感覚が残ります。
本人が、
「帰りたい」
と言えば、なおさらです。
本当にこれでよかったのか。
家に連れて帰った方がよかったのでは。
もっと別の方法があったのでは。
そう考えました。
でも家ではもう支えきれなかった
一方で、入院前の数日を振り返れば、家族だけで支えるのは難しくなっていました。
ほとんど眠れていない。
一日中話し続ける。
事実とは違う話が増える。
家族を家族だと思えなくなる。
自分が犯罪を犯したと信じる。
警察を呼ぶ。
ここまで来ていました。
私は、
「家に連れて帰る方が危ない」
とも感じていました。
だから、つらかったけれど、入院そのものには納得していました。
初めて「保護室」を見た
入院が決まった後、私は初めて、精神科の保護室を見ました。
それまで、テレビや映画でしか知らない世界でした。
実際に自分の子どもがそこへ入ることになるとは、想像したこともありませんでした。
目の前で見ると、かなり衝撃が大きかった
本人は、スタッフに付き添われながら、保護室へ入りました。
私は、その様子を見ました。
病院側からは、無理に見なくてもいいという配慮もありました。
でも私は、見ておきたいと思いました。
何が起きているのか、自分の目で見たかったからです。
「閉じ込められた」ではなく、安全のための場所
当時の私には、保護室という言葉自体が怖く感じました。
でも、保護室は罰を与える場所ではありません。
症状が強く、本人自身や周囲の安全を確保する必要がある場合に、
刺激を減らした環境で治療を行うために使われることがあります。
ただ、制度として理解することと、自分の子どもがそこにいるのを見ることは、
まったく別でした。私はその日、かなり泣きました。
医療保護入院=ずっと強制的に入院する、ではない
「医療保護入院」と聞くと、私は最初、本人の意思とは関係なく、長期間ずっと閉じ込められるような印象を持っていました。
でも、そういう制度ではありません。
入院の必要性は継続的に見直される
医療保護入院は、入院が必要な状態だから行われるものです。
本人の状態が改善し、任意入院へ変更できる状態になったり、退院できる状態になったりすれば、その時点で入院のあり方も変わります。
だから、
「一度医療保護入院になったら、そのままずっと」
というものではありません。
本人の権利を守る仕組みもある
精神科の入院では、本人の自由が制限されることがあります。
だからこそ、入院の必要性や手続き、退院請求などについて、本人の権利を守る仕組みがあります。
私は入院初日、そんなことまで考える余裕はありませんでした。
でも、後から制度を調べて、
「家族と病院だけで好きに決められる仕組みではない」
ということを知りました。
「措置入院」とは違う
精神科入院について調べると、
「措置入院」
という言葉も出てきます。
「統合失調症 措置入院」
という検索があります。
医療保護入院と措置入院は、同じものではありません。
医療保護入院は、治療や保護が必要で同意が難しい場合
医療保護入院は、精神障害があり、入院治療が必要と判断され、本人の同意を得ることが難しい場合などに行われます。
家族等の同意が関わることがあります。
措置入院は、自傷他害のおそれがある場合
措置入院は、精神障害のため、本人自身を傷つけたり、他人に危害を加えたりするおそれがあると判断された場合に、行政の手続きによって行われる入院です。
私も最初は、
「本人の意思に反して入院するなら、全部同じなのでは」
と思っていました。
でも、要件も手続きも違います。
家族として一番つらかったのは「置いて帰ること」だった
制度の説明より、私にとって一番きつかったのは、入院が決まった後でした。
本人を病院に残して、家族だけ帰らなければならない。
それまで毎日一緒にいたのに
朝まで家にいた。
一緒に車に乗った。
病院まで来た。
それなのに、その日から突然、本人はここに残る。
私は帰る。
この切り替わりが、とてもつらかったです。
それでも「今はここにいる方が安全」と思った
帰り道、何度も、本当にこれでよかったのかと思いました。
でも、家にいた数日間を思い出すと、やはり、医療につながったこと自体には安心もありました。
家族だけで、一晩中、本人の妄想や不安に対応する必要がない。
専門家が見てくれる。
そのことに、救われた部分もありました。
医療保護入院を経験して思ったこと
私は、精神科入院について、何も知らなさすぎました。
任意入院。
医療保護入院。
措置入院。
閉鎖病棟。
保護室。
全部、自分には関係のない言葉だと思っていました。
でも、ある日突然、その全部が、自分の家族の話になりました。
制度を知ると、少し怖さが減った
最初は、
「医療保護」
という言葉だけで怖かったです。
でも、なぜその制度があるのか。
どんな条件で使われるのか。
本人の状態が改善したらどうなるのか。
そういうことを知ると、少しずつ、ただ怖いだけの言葉ではなくなりました。
家族が全部背負って決めたわけではない
そして、私にとって一番大きかったのは、
「私一人が本人を入院させたわけではない」
と分かったことでした。
医師が必要性を判断した。
病院が受け入れた。
制度に沿って入院になった。
家族は、その一部に関わった。
そう考えると、少しだけ、あの日の重さを整理できるようになりました。
今振り返って思うこと
あの日、私は初めて、精神科の医療保護入院を経験しました。
言葉の意味も、制度の仕組みも、ほとんど知りませんでした。
ただ、本人が家に帰れる状態ではないことだけは、分かっていました。
今なら、医療保護入院は、本人を罰するためのものではなく、
本人が自分で治療を選べないほど状態が悪い時に、治療と安全を確保するための制度の一つ
だと理解しています。
それでも、家族としてはつらいです。
本人を残して帰ること。
本人の意思と違う形で入院が始まること。
その場では、制度を理解しているかどうかとは別に、感情がついていきません。
でも、わが家の場合、あの時入院できたことで、ようやく家族だけで抱えていた状態から、医療につなぐことができました。
私は今、あの日の医療保護入院を、
「本人を手放した日」ではなく、「家族だけで抱えるのをやめて、医療にバトンを渡した日」
だったと思うようにしています。
→ 入院1日目③|統合失調症と告げられ、医療保護入院へ。初めて見た保護室
次は、
入院前の5日間をまとめながら、
「統合失調症の前兆とは何だったのか」
を振り返ります。
→ 統合失調症の前兆とは?家族が初発後に振り返って感じたこと


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