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統合失調症の陰性症状とは?家族から「やる気がない・話さない」に見えるとき

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統合失調症について調べ始めると、

「陽性症状」
「陰性症状」

という言葉が出てきます。

幻聴や妄想などは「陽性症状」。

では、陰性症状とは何なのでしょうか。

「寝てばかりいる」

「何もしたがらない」

「人と話さなくなった」

「表情がなくなった」

そんな状態を指して、「陰性症状では?」と心配する家族もいると思います。

私も、入院直後に長時間眠っている本人を見ながら、

「このまま何もする気がなくなってしまうのかな」

と不安になったことがありました。

でも調べてみると、陰性症状はそんなに単純ではありませんでした。

疲労、抑うつ、薬の影響、幻聴や妄想による消耗、刺激の多い環境などでも、外からは陰性症状のように見えることがあります。

専門的にも、統合失調症そのものに由来する「一次性」の陰性症状と、ほかの要因によって起こる「二次性」の陰性症状を区別することが重要とされています。

この記事では、統合失調症の陰性症状とは何か、家族からはどう見えるのか、そして「何もしない=陰性症状」と決めつけてはいけない理由について、わが家の経験も交えてまとめます。

統合失調症の「陰性症状」とは?

統合失調症の症状は、大きく陽性症状と陰性症状などに分けて説明されることがあります。

陽性症状は、幻聴や妄想など、通常はない体験が現れる症状。

一方の陰性症状は、もともとあった意欲や感情表現、社会的な活動などが低下したように見える症状です。

NICEは陰性症状の例として、感情の乏しさ、意欲の低下、会話の乏しさ、社会的な引きこもり、セルフケアの低下などを挙げています。

「やる気がなくなる」だけではない

陰性症状というと、

「やる気がない」

というイメージが強いかもしれません。

でも実際には、いくつかの側面があります。

たとえば、

  • 何かを始めようとする意欲が低下する
  • 楽しいと感じにくくなる
  • 人と関わろうとする気持ちが減る
  • 会話量が減る
  • 表情や声の抑揚が乏しくなる

などです。

だから、単に「今日は何もしたくない」という一日の状態だけを見て判断するものではありません。

外からは「怠けている」ように見えることがある

ここが家族にとって難しいところだと思います。

本人が、

起きない。

出かけない。

話さない。

何かに誘っても乗ってこない。

となると、

「少しは動いたら?」

と言いたくなることがあります。

でも、本当に陰性症状が強い場合には、「やればできるのにやらない」という単純な怠けの話ではありません。

だから、本人を責める前に、

「これは本人の意志だけの問題なのか?」

と一度考える必要があるのだと思います。

「寝ている=陰性症状」とは限らない

わが子が入院した直後、とにかくよく眠っていました。

21時間くらい眠るような日もあり、

「食べて、寝る」

という生活になっていた時期があります。

当時の私は、

「これが陰性症状なの?」

と心配しました。

でも今は、その状態だけを見て陰性症状だったとは考えていません。

急性期は、それだけでかなり消耗している

入院前の本人は、精神症状だけでなく、睡眠も大きく乱れていました。

入院して治療が始まり、それまでの疲れを取り戻すように眠っていた可能性もあります。

さらに本人には頭痛もありました。

光や音もつらい。

薬の治療も始まったばかり。

そういう状況を考えると、

「寝ているから陰性症状」

とはとても言えません。

薬や抑うつなどでも似た状態に見えることがある

専門的にも、陰性症状のように見える状態には注意が必要とされています。

統合失調症そのものによる一次性の陰性症状だけでなく、抑うつ、薬による鎮静や運動症状、陽性症状の影響、環境の刺激不足などから二次的に似た状態が出ることがあります。

たとえば、妄想が怖くて人を避けている人なら、外からは「人と関わりたくない」ように見えるかもしれません。

でも実際には、

人への興味がなくなったのではなく、怖くて避けている

可能性があります。

そこを区別するのは、家族だけでは難しいと思います。

陰性症状とうつ病では、「動けない」「楽しめない」「人と関わらない」など、家族から見ると似て見える部分があります。両者がなぜ見分けにくいのかはこちらにまとめました。
▶ 統合失調症の陰性症状とうつ病は似ている?家族から見分けにくい理由

陰性症状にはどんなものがある?

陰性症状について調べると、いくつかの特徴に分けて説明されています。

家族としては専門用語を覚えるより、

「本人のどこが以前と変わったのか」

を見る方が分かりやすいと思います。

意欲・楽しさ・人との関わりが減る

たとえば、

「以前好きだったことをしなくなった」

「何かを始めようとしなくなった」

「人と会いたがらなくなった」

「楽しいと言わなくなった」

といった変化です。

これは、本人の内側にある意欲や楽しさ、人との関わりへの動機が低下する側面です。

ただし、これも一時的な疲労や抑うつとの区別が必要です。

表情や会話が少なくなる

もう一つは、外から見えやすい変化です。

表情が乏しくなる。

声の抑揚が減る。

返事が短くなる。

自分から話さなくなる。

こうした変化も陰性症状の一部として扱われます。

でも、ここでも、

「静かな性格だから陰性症状」

とはなりません。

その人自身の以前の状態と比べて、どのように変化したかを見ることが大事だと思います。

男性の方が陰性症状が強い傾向がある?

家族会に参加したとき、陰性症状について悩んでいるご家族から話を聞く機会がありました。

私がその場で話を聞いた範囲では、

本人はみな男性でした。

もちろん人数の少ない家族会での経験なので、

「男性だから陰性症状が出る」

とは言えません。

ただ、

「たまたまなのかな?」

と思って後から調べてみました。

研究では男性の方が強い傾向が報告されている

2025年の性差に関する系統的レビューでは、統合失調症の男性は女性と比べて、平均すると陰性症状がより強い傾向や、社会機能が低い傾向が報告されています。

過去の研究でも、男性の方が陰性症状が目立つという報告はあります。

ですから、家族会で私がたまたま話を聞いた人が全員男性だったことと、研究で示されている傾向には重なる部分があります。

でも「男性なら出る、女性なら出ない」ではない

ここは絶対に分けて考えたいところです。

研究でいう性差は、

大勢を比べたときの平均的な傾向

です。

男性でも陰性症状がほとんど目立たない人はいますし、女性でも強い陰性症状が出る人はいます。

だから、

「うちは女性だから大丈夫」

とも、

「男性だから陰性症状が出るだろう」

とも言えません。

一人ひとりの経過を見ることが一番大事です。

わが子には今のところ、強い陰性症状は見えていない

では、わが子はどうなのか。

今のところ、家族の私が見ている範囲では、

強い陰性症状が前面に出ているようには見えていません。

ただし、これは私が診断しているという意味ではありません。

本人の現在の様子についての、家族としての記録です。

「いろいろな人と話したい」と言っている

ちょうど最近、本人がこんなことを言いました。

「いろいろな人と話したい」

私はこの言葉を聞いて、

「ああ、人と関わりたい気持ちはあるんだ」

と思いました。

入院中も、調子がいいときには人と話したり、冗談を言ったりしています。

だから少なくとも現在、

人との関わりそのものへの興味がなくなっているようには見えません。

これは家族として、少し安心しているところです。

入院直後に寝ていたことを、後から陰性症状にはしない

一方で、過去だけ切り取れば、

「ずっと寝ていた」

「何もしない時間が多かった」

という時期はあります。

でも私はそれを、

「やっぱりあのとき陰性症状だったんだ」

とは決めません。

急性期の疲労。

睡眠不足の反動。

頭痛。

光や音へのつらさ。

薬の影響。

いろいろなものが重なっていた時期だからです。

後から病名を知ると、過去のすべてを症状に当てはめたくなります。

でも、そこは慎重でいたいと思っています。

陰性症状と「回復途中」を家族はどう見分ける?

これが一番難しいところかもしれません。

退院後や回復期に、

寝ている。

何もしない。

学校や仕事へ行かない。

以前より口数が少ない。

そんな状態を見ると、家族は心配になります。

でも、本人がまだ回復途中なら、

「休むことそのものが必要」

という場合もあります。

一日ではなく「続いている変化」を見る

私なら、

「今日一日寝ていた」

より、

以前と比べて、意欲や会話、人との関わりがどのように変化して、それがどのくらい続いているのか

を見るようにしたいと思っています。

一日よく眠った。

今日は話したくなかった。

それだけで陰性症状とは言えません。

一方で、長く続く変化があり、本人自身も困っているなら、主治医に伝える意味があります。

「何もしない」以外の理由がないかも見る

たとえば、

「外へ出たくない」

という一つの行動でも、

人に会うのが怖い。

音がつらい。

頭痛がある。

眠い。

薬で体が重い。

気分が落ち込んでいる。

何をしても楽しくない。

では、意味がまったく違います。

だから私は、

「なんでやらないの?」

より、

「何かつらいことある?」

と聞く方がいいのかなと思っています。

陰性症状は家族が「頑張らせれば治る」ものではない

陰性症状について家族が一番つらいのは、

「本人にやる気を出してほしい」

と思うことかもしれません。

本人がベッドにいると、

「少し散歩したら?」

「何かしたら?」

「いつまで寝てるの?」

と言いたくなる。

私もせっかちな方なので、これは気をつけなければと思っています。

無理に動かすより、何が障害になっているかを見る

陰性症状のように見える状態には、先ほど書いたようにさまざまな原因があり得ます。

だから、

本人を励まして動かせば解決する

とは限りません。

陽性症状が残っているならその治療が必要かもしれない。

抑うつなら別の対応が必要かもしれない。

薬の副作用なら薬について相談する必要があるかもしれない。

本当に陰性症状が中心なら、心理社会的なリハビリテーションなども含めて支援を考えていくことになります。

NICEでも、統合失調症の治療では薬物療法だけでなく、CBTや家族介入などの心理社会的支援を組み合わせることが推奨されています。

「できること」が残っているなら、そこを見る

私は入院中、

できないことばかり気になっていました。

70ピースのパズルができない。

長い文章が読めない。

光がつらい。

音がつらい。

でも、

40ピースならできる。

音読ならできる。

短時間なら話せる。

冗談も言える。

そういう残っている力もありました。

陰性症状について考えるときにも、

「何ができなくなった?」

だけではなく、

「今、何ならやりたい? 何ならできる?」

を見ることは大事なのだと思います。

「いろいろな人と話したい」という今を、そのまま見ていきたい

私は先のことを考えると、どうしても心配になります。

今は人と話したいと言っている。

でも将来、陰性症状が出るかもしれない。

そんなことを考え始めれば、きりがありません。

でも統合失調症の症状の出方や経過は一人ひとり違います。NICEも、一人ひとりが異なる症状や体験の組み合わせを持つとしています。

だから今は、

「いろいろな人と話したい」

と言っている本人を、そのまま見ていたいと思います。

入院直後に寝ていたから、

「この子は陰性症状が強くなる」

と決めない。

女性だから、

「陰性症状は出ない」

とも思わない。

そして少し静かな日があったからといって、

「陰性症状が始まった!」

とも思わない。

本人の変化を見ながら、気になることがあれば主治医に相談する。

そのくらいでいいのだと思っています。

統合失調症という病名を知ってから、私は何でも症状に見えてしまう時期がありました。

でも今は、

病名から本人を見るのではなく、本人を見てから必要なことを考える。

なるべくそうしたいと思っています。

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