入院8日目。
前日、本人の父親側の親族から、久しぶりに連絡がありました。
本人の父親のお墓参りに行ってきたこと。
そして、本人のことを、よくお願いしてきたこと。
そう話してくれました。
私は、ありがたいと思うのと同時に、少し申し訳ないような気持ちにもなりました。
父親側の家族も、かなりショックを受けていた
連絡をくれた親族の一人は、医療に関わる仕事をしています。
そのため、統合失調症と聞けば、ある程度どういう病気なのかも分かります。
話は早かったです。
でも、分かるからこそのショックもあったようでした。
私が想像していなかったところでも、心配してくれていた
そして私が想像していなかったのが、もう一人の親族の受け止め方でした。
本人と血のつながりのある側の家族です。
身近な家族を精神疾患で亡くした経験があり、
さらに別の親族も、最近精神疾患を抱えた末に亡くなっていたと聞きました。
そこへ今度は、血のつながった本人が統合失調症になった。
かなりショックを受けていると聞きました。
※本人のプライバシー保護のため、親族関係や病歴の一部をぼかして書いています。
「よくなったら、一緒にご飯に行こう」
それでも、電話の向こうでは、明るく話してくれました。
「よくなったら、本人も一緒にご飯を食べに行こう」
「積もる話もあるから」
と言ってくれました。
久しぶりの電話だったこともあって、私は、なんだか申し訳ない気持ちになりました。
本人が病気になったことで、いろいろな人に心配をかけている。
そんなことまで考えてしまいました。
「お墓参りに行ってくれたって」と本人に伝えた
その話を、面会の時に本人へ伝えました。
「お父さんのお墓参りに行ってくれたって」
「よくお願いしてきたって」
すると本人は、
「へぇ〜」
でした。
……軽い(笑)。
私は、ちょっと拍子抜けしました。
父親のお墓参りには、いつも一緒に行っていた
本人の父親は、本人が小さい頃から、ずっと一緒に暮らしていたわけではありません。
本人には、父親がいない寂しさが、私が想像するほど強くはなかったように見えました。
本人にとっては、祖父の存在もとても大きかったからだと思います。
父親が亡くなったと連絡を受けた時も、反応は、やっぱり、
「へぇ〜」
という感じでした。
でも、だからといって、父親という存在を何とも思っていなかったわけではありません。
「私の父親」という意識は、ちゃんとあった
お墓参りには、毎年、決まった時期に一緒に行っていました。
私を誘って、本人が必ず来ます。
本人なりに、
「自分の父親だ」
という意識は、
ずっと持っているようでした。
今回も、そろそろお墓参りへ行く時期でした。
本人は、ぽつりと、
「しばらくは行くの厳しいね」
と言いました。
私は、
「あぁ、そういうこともちゃんと考えているんだな」
と思いました。
話している途中で、「あれ?」
そんな話を、私が少し長めにしていた時でした。
ふと、本人の反応が止まったように見えました。
目の前にはいる。
でも、なんとなく、こちらに意識が向いていない。
私は、
「あれ?どっか行っちゃった?」
と思いました。
「おーい、帰っておいで(笑)」
少しの会話なら、気づかなかったかもしれません。
でも、私が長々と話していたので、途中から明らかに、話が入っていないように見えました。
そこで私は、冗談っぽく、
「おーい、帰っておいで(笑)」
と言いました。
すると本人も笑って、
「いかんいかん、どこか違う世界にいっとった(笑)」
と言いました。
私も笑いました。
その場では、本当にそれだけでした。
「ときどき、そうなるの?」
でも、ちょっと気になりました。
私は本人に、
「ときどき起きるの?」
と聞きました。
すると、本人は、
「そう。どっか行っちゃう時があるの」
と言いました。
その時は、ふざけた会話で終わった
本人も笑っている。
私も笑っている。
だから、その場では、深刻な話にはしませんでした。
「まぁ、今は疲れやすいしね」
くらいの気持ちでした。
入院して、まだ一週間ほどです。
大部屋で眠るようになったばかり。
夜中に目が覚めることもある。
新聞を少し読むだけでも疲れる。
そんな時期でした。
→ 入院7日目|「ダチョウになっちまったね」本人らしい冗談を聞いて、娘が戻ってきた気がした
病院を出てから、急に気になった
ところが、病院を出て、帰り道。
さっきの会話が、急に頭に戻ってきました。
「どこか違う世界にいっとった」
「ときどき、どっか行っちゃう」
え。
あれ、どういうこと?
長い話に集中できなかっただけ?
私はまず、単純に集中力の問題なのかな、と思いました。
この頃の本人は、活字を読んでも、以前ほどすんなり頭に入らないと話していました。
少し何かをすると、
疲れる。
眠る。
また少しやる。
そんな状態です。
だから、私が長々と話していたことで、途中から集中が続かなくなっただけなのかもしれません。
でも、何なのかは私には分からなかった
一方で、本人自身が、
「ときどき起きる」
と言ったことが、私は気になりました。
統合失調症では、
注意や集中力、
情報を一時的に保持して考える力、
情報を処理する速さなど、
認知機能のいくつかの領域に変化がみられることがあります。
ただ、この日の本人に起きていたことが、それだったのか。
睡眠不足だったのか。
薬の影響だったのか。
単に疲れていただけなのか。
それとも、私の話が長すぎただけなのか(笑)。
この一場面だけで、私には分かりません。
だから、
「これが統合失調症の○○という症状だった」
とは、今も決めつけないようにしています。
→ 統合失調症の認知機能障害とは?記憶・注意・処理速度について家族が調べたこと
笑えるくらい戻ってきたからこそ、細かいことが気になり始めた
考えてみれば、入院直後の私は、こんな細かいことを気にする余裕すらありませんでした。
食べられるか。
水分は取れるか。
怖がっていないか。
保護室から出られるか。
そればかりでした。
一週間前とは、心配の種類が変わってきた
今は、
本人と冗談が言える。
お墓参りの話もできる。
本人自身が、
「暇だ」
「犬みたい」
「ダチョウみたい」
と笑える。
だからこそ、今度は、
「あれ、集中力は大丈夫?」
「頭の働きは戻る?」
という、
別の心配が出てきました。
回復してくると、親の心配も、次の段階へ移っていくんだなと思います。
今振り返って思うこと
この日、本人の父親側の家族が、本人のことを思って、お墓参りをしてくれたと知りました。
遠くから、心配してくれている人がいる。
「よくなったら一緒にご飯を食べよう」
と言ってくれる人がいる。
ありがたいことでした。
本人は、いつもの調子で、
「へぇ〜」
でしたけど(笑)。
そして、そんな普通の会話の途中で、一瞬、本人がどこかへ行ってしまったように見えました。
私が、
「おーい、帰っておいで」
と言うと、本人は、
「いかんいかん、違う世界にいっとった」
と笑った。
その時は、私も笑いました。
でも帰り道、急に不安になりました。
あれは何だったんだろう。
入院8日目。
症状が少し落ち着いてきたからこそ、今度は、本人の「頭の働き」が、私は気になるようになっていました。


コメント