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入院11日目|「1/6?1/7?」70ピースのパズルができない。その一言が頭から離れなくなった

📖 ある日からの記録
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入院11日目。

この日も、仕事の都合で午前中に面会へ行きました。

ちょうどお昼の時間と重なったので、前日と同じように、本人がお昼ごはんを食べるのを見ながらの面会です。

食事は、少しずつ食べられるようになっていました。

入院直後の、ほとんど食べられなかった頃を考えれば、それだけでも大きな変化です。

でも、この日の私の頭を占領したのは、ご飯ではありませんでした。

70ピースのジグソーパズル。

でした。

「70ピースのパズルができないの〜」

本人が、また言いました。

「70ピースのパズルができないの〜」

出ました。

負けず嫌い(笑)。

前日も、40ピースはできたけれど、70ピースができないと悔しがっていました。

私は、

「焦らなくていいよ」

「根を詰めなくていいよ」

と言いました。

そして同時に、自分自身にも、

「焦るな、私」

と言い聞かせたばかりでした。

→ 入院10日目|40ピースはできる。でも70ピースはできない。「焦るな」と自分にも言い聞かせた

でも、どうしても気になる。

私は、本人に聞いてみました。

「どこまでできた?」

私は昔から「できたところ」を聞くようにしていた

これは、本人が小さい頃から、なるべく意識してきたことでした。

「できなかった」

と言われた時に、全部できなかったように扱わない。

「どこまではできた?」

と聞く。

できているところを、まず確認する。

本人が子どもの頃から、そういうふうに声をかけてきました。

だから今回も、いつものように聞いただけでした。

すると本人は、少し考えて、

「1/6? 1/7?」

と答えました。

「1/6? 1/7?」想定外の答えだった

私は、一瞬、固まりました。

もちろん、顔には出さないようにしました。

ポーカーフェイス。

ポーカーフェイス。

でも、頭の中では、大騒ぎです。

え。

1/6?

1/7?

70ピースのうち、それくらいしかできていないってこと?

私は、思っていたよりずっと少ない答えに、かなり驚きました。

「認知機能って、そんなレベルまで落ちるの?」

その瞬間、私の頭には、嫌な考えが一気に浮かびました。

やば。認知機能って、そんなレベルなの?

そんなふうに、現実を突きつけられた気がしました。

もちろん、今考えれば、70ピースのジグソーパズル一つで、本人の認知機能全体を判断できるわけではありません。

でも、その時の私は、そんなに冷静ではありません。

昨日、

「焦るな私」

と決めたばかりなのに、もう焦っています。

「ところで、1/6と1/7はどっちが大きい?」

そして、私は、また余計な確認をしたくなりました。

本人は、

「1/6? 1/7?」

と普通に分数で答えています。

でも私は、ふと思ってしまいました。

ところで。

1/6と1/7、どっちが大きいかは分かるんだろうか。

聞くのが怖かったです。

でも、聞いてしまいました。

「1/6と1/7って、どっちが大きい?」

すると本人は、間髪入れずに、

「1/6だよ」

と即答。

その言い方には、ちょっと、

「そんくらい分かるさ」

みたいな笑いまで含まれていました。

私は、心の中で、

よかった。

と思いました。

……いや。

待て。

よかったじゃない(笑)。

じゃあ、なんでパズルは1/6くらいしかできない?

分数の大小は、普通に分かっている。

なら、なんで70ピースのパズルは、

1/6とか1/7くらいしかできないんだ。

私の疑問は、全然解決していません。

むしろ、新しい疑問が増えました。

そこで私は、自分なりに原因を考えました。

そして、勝手にひらめきました。

「分かった! 絵が複雑なんだ!」

本人は、何が「分かった」のか、よく分からない顔をしています。

そして、普通に答えました。

「いや。複雑な絵でも何でもないよ。キャラクターだよ」

……そうですか。

私は、答えに困りました(笑)。

「そのうちできるさ」としか言えなかった

結局、私が本人に言えたのは、

「まぁ、そのうちできるさ」

くらいでした。

それ以上、何か言って、本人を不安にさせたくありません。

本人自身、できないことを悔しがっています。

そこへ私まで、

「なんで?」

「これできる?」

「じゃあ、これは?」

と確認を始めたら、本人にとっては、たまったものではありません。

前日に、

回復をテストにしない

と決めたばかりです。

だから、それ以上は聞きませんでした。

面会後、本人はまたパズルをしに行った

面会が終わると、本人は、またデイルームへ行くと言いました。

目的は、あの70ピースのパズルです。

できないから、やめる。

ではない。

できないから、またやる。

そのあたりは、完全にいつもの本人でした。

負けず嫌い。

できないものがあると、気になる。

できるようになるまで、試したくなる。

私は、

「根を詰めすぎないでね」

という気持ちで送り出しました。

そして午後、私はパズルのことしか考えられなくなった

問題は、本人ではなく、私です。

病院を出てから、頭の中は、ずっと、

1/6。

1/7。

でした。

仕事をしていても、ふと浮かぶ。

70ピース。

1/6。

1/7。

ほとんどできてないじゃん。

と。

昨日、あれだけ、

「焦るな私」

と思ったのに。

全然焦らないなんて、無理でした。

「物理が得意なあの子が?」

私が特に引っかかったのは、本人が、もともと理系科目を得意としていたことです。

数学。

物理。

化学。

本人にとって、

考えること自体は、苦手なことではありませんでした。

難関大学向けの模試でも、理系科目では上位に入ることがありました。

特に物理では、図を見て、関係を考えて、頭の中で整理する。

そういうことを、ずっとやってきたはずです。

だから、私は思ってしまいました。

あの子が?

70ピースのパズル?

空間認識とか、いけたよね?

頭の中で、昔の本人と、今目の前にいる本人を、何度も比べてしまいました。

でも、パズル一つで何が分かるわけでもない

今振り返れば、この時の私は、一つの結果から、先のことまで考えすぎていました。

統合失調症では、

注意や集中、

記憶、

情報処理の速さ、

段取りなど、

認知機能に変化がみられることがあります。

国立精神・神経医療研究センターも、症状の例として注意・集中力低下や処理速度、遂行機能の低下などを挙げています。

一方で、認知機能は、一つの能力だけではありません。

研究などで用いられる評価でも、

処理速度、

注意、

ワーキングメモリ、

視覚学習、

推論や問題解決など、

複数の領域に分けてみていきます。

だから、

70ピースのパズルがその日に難しかった

という一つの出来事だけで、本人の認知機能全体を判断することはできません。

まして、

「この先もできない」

と予測できるものでもありません。

でも、その時の母には、そこまで割り切れませんでした。

→ 【関連記事】
統合失調症の認知機能障害とは?記憶・注意・処理速度について家族が調べたこと

本人は「できない」と言いながら、また挑戦していた

この日のことを振り返ると、私が見るべきだったのは、

「1/6しかできなかった」

だけではなかったと思います。

本人は、自分でパズルを選んでいる。

40ピースは完成させている。

70ピースが難しいことも、自分で分かっている。

分数の大小は、即答できる。

そして、できない70ピースに、また挑戦しに行っている。

できないところもある。

でも、できているところもある。

前日に自分で決めたはずの、

「できないことだけを見ない」

を、私はもう一度思い出す必要がありました。

「今だけなのか、この先もなのか」は誰にも分からない

親として一番怖かったのは、70ピースのパズルそのものではありません。

これが今だけなのか。

この先もなのか。

そこでした。

入院して、まだ10日ほど。

急性期を抜け始めたばかりです。

眠りもまだ安定していない。

疲れやすい。

頭痛もある。

薬も飲み始めたばかり。

そんな時期に、未来の能力まで決めようとすること自体、無理があります。

必要に応じて認知機能を評価する場合には、医療機関では心理検査などを用いて複数の側面から確認することがあります。

私が面会室で、70ピースのパズルを見ながら、本人の未来まで測る必要はありません。

分かってはいる。

でも、心配になる。

親って、そんなものなのかもしれません。

今振り返って思うこと

入院11日目。

本人は、また言いました。

「70ピースのパズルができないの〜」

私は、

「どこまでできた?」

と聞きました。

返ってきた答えは、

「1/6? 1/7?」

でした。

私は、内心かなり動揺しました。

でも、その気持ちを悟られないように、

平静な顔をしました。

怖くなって、

「1/6と1/7、どっちが大きい?」

と聞いたら、本人は即答。

「1/6だよ」

しかも、ちょっと笑っていました。

私は、安心したり、また心配したり、一人で大忙しです。

そして本人は、面会が終わると、また70ピースのパズルをやりに、デイルームへ行きました。

できないから、もうやらない。

ではなく、できないから、またやる。

その姿は、昔からの本人そのものでした。

私がこの日、本当に覚えておくべきだったのは、

「70ピースの1/6しかできなかった」

だけではなかったのだと思います。

「それでも本人は、またやりに行った」

そこまで含めて、入院11日目でした。

そして私は、午後になっても、1/6だの、1/7だの、ずっと考えていました。

昨日に続いて、もう一度。

焦るな、私。

です。

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